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2010/06/23 問題提起

低GWP冷媒Fガスの「第3のリスク」について

新冷媒Fガスは温暖化係数は低いものの、オゾン層破壊、温暖化に次ぐ生態系への「第3のリスク」が懸念される

Fガスは基本構造である炭素−フッ素(C−F)結合が強い強力な温室効果ガスです。そこで温室効果を小さくするためには、分解性を高めるしかありません。 しかし、有機フッ素化合物であるがゆえに、その分解物が地球の物質循環に現時点では予測できていない打撃…例えば毒性の高いフッ化水素や強酸性物質であるトリフルオロ酢酸(TFA)による生態系被害など…を及ぼすことが否定できません。

ストップ・フロン全国連絡会はHFOsなどの新冷媒による生態系への第三のリスク」を懸念しています。
「第三のリスクとは」 1)オゾン層破壊、2)温暖化 に次ぐ予測出来ない環境への影響です。

なお、この問題に関しては、6月10日に開かれた「日本冷凍空調学会」において、当会代表西薗大実(群馬大学)が講演の中で提起いたしました。


以下、詳細です。

新冷媒Fガスは温暖化係数は低いものの、オゾン層破壊、温暖化に次ぐ生態系への「第3のリスク」が懸念される

Fガスは基本構造である炭素−フッ素(C−F)結合が強い赤外放射強制力を示すので、強力な温室効果ガスである。そこで温室効果を小さくするためには、分解性を高めるしかない。
しかし、有機フッ素化合物であるがゆえに、その分解物が地球の物質循環に現時点では予測できていない打撃…例えば毒性の高いフッ化水素や強酸性物質であるトリフルオロ酢酸(TFA)による生態系被害など…を及ぼすことが否定できない。

NEDO主催「次世代エアコン、冷凍機に関する2010国際シンポジウム」における産業総合技術研究所安全科学研究部門の発表では、現在の雨水と地表水中の最大TFA濃度は0.45 及び 1.3 μg/Lであり、水系生態系での感受性の高い藻類への無作用量(NOAEL) である0.10 mg/Lに比べて約1/80だが、分解性の高いFガスの放出で生態系に影響が出る危険性を指摘している。

Veldersらは、発展途上国がHFCに転換してしまう場合、2050年には先進国の8倍、温室効果ガスの9~19%に達するとしている。これを論拠として、アメリカが2009年モントリオール議定書に提案した「フェーズダウン」という考え方がある。これは附属書Fを新設してオゾン層非破壊のHFC、HFOなど20物質を追加し、先進国、途上国ともに現在のHCFC使用量を含むGWP値算出の基準量に対して15%の枠まで段階的削減をするが、最終的にその枠を維持する(したがってフェーズアウトではない)とするものである。

これは、裏を返せばGWP換算で15%、約1/7の排出枠を確保するというものであり、一見合理的に見えるが、GWPが数百分の1のHFOsに切り替えれば、数量では少なく見積もっても現在の50倍程度を使えることを意味する。

HCFCは2007年のモントリオール議定書締約国会議で生産規制が前倒しされたが、それでも、途上国は2009・2010年の平均を基準として2013年に凍結、その後削減とのゆるい削減スケジュールである。

このため途上国の生産は増大しており、中国の2006年生産量は約7億t-CO2相当と莫大である。2009年ラクイラ・サミット合意文書第66項ではHCFCの生産規制によるHFCの増加を懸念する記述がみられるが、それ以前にCFC、HCFC自体が強力な温室効果ガス(京都議定書規制対象でないというだけ)であり、アメリカ提案にしたがえば、低GWPの冷媒Fガスを、先進国はもとより途上国でもほぼ無制限に使用し、排出できることになろう。

その場合、オゾン層破壊でも温室効果でもなく、「第3のリスク」として生態系に対する毒性がクローズアップされることになるのではないか。 これを念頭に置いたリスク評価の確立が必要である。

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