コラムコラム

2015/07/02

フッ素を含む新しい冷媒ガス(HFC32)の危険性の問題

 科学技術の急速な発達により便利な生活が広がっている。また地球環境問題についての関心が高まり、クーラーや最新技術の湯沸かし器(ネオキュート)などに使用されるガスは、オゾン層を破壊せず、大気の温暖化率も低いものが開発されている。これだけ見ると、一見、良い方向に向かっているように見える。しかしながら、相変わらず自然冷媒の使用は推奨されずにむしろ抑えられ、フッ素を含む人工冷媒の使用が推奨されることによって、思わぬ危険が身近に生じ始めていることについては、一般社会は気づいていない。


 ごく最近になって作られ、クーラーなどの機器に充填されるようになったHFC32(冷媒名R32)というガスがある。これは、自然冷媒のアンモニアガスと同程度の可燃性のガスである。どちらも似たような大気中濃度で引火爆発する。かつてはこの可燃性が危険だということで使用が極度に敬遠された。しかしアンモニアガスは、燃えた場合でも燃焼自体の危険性をのぞけば、危険な生成物はない。ところがHFC32は、燃えると(分解すると)、青酸カリが生み出す毒性に匹敵する猛毒を発生する。たしかに、機器の中に充填され、通常使用される状態では、HFC32も引火爆発の危険性はない。機器は十分にガスがもれないように設計されている。しかし日本では、どこでも大きな地震に見舞われる危険がある。その危険を考慮しなければ、一般に販売される機器の安全性は十分とは言えない。これは東日本大震災を近々に経験した日本人の常識だろう。


 ところが、HFC32が充填された機器については、東大や理科大、NEDOなど、日本を代表する安全試験の実験施設が、通常の使用状態でしか実験していない。大地震に見舞われれば起こる激しい揺れ、その後の火災などの状況下での危険性については、実験確認しようともせずに安全だというお墨付きを出している。これではこの種のガスがもっている危険性は一般消費者の間で認識されないことになる。激しい揺れによって、HFC32を密閉していたつなぎ部分がはずれ、ガスが一挙に放出されることは、十分に予想されることである。大気中濃度が14パーセントから30パーセント程度の間に入ったとき、ガスは引火し、フッ化水素やカルボニルフルオライドを生成する。これらの生成物は、人間を含む動物が吸引すれば、ごく微量でもただちに死の危険に陥るか、深刻な障害を引き起こす。水に溶けて皮膚につけば、皮膚からしみ込んで身体のおもにカルシウムを溶かして重い障害を残すことが予想される。
 このガスは、現在、政府によって推奨されて、日本のメーカー各社によって採用され、機器に充填されて販売されはじめている。さらに同様の新ガスも研究開発されている。いずれ諸外国にも輸出されるだろう。しかしこの危険性が指摘されないままに事故が起これば、メーカーの企業倫理が問われるだろう。また実際に被害に合うのはこの種の問題に疎い消費者である。だれがその責任を取るのだろうか。東京都杉並区では、これから多くの幼稚園の設置が計画されており、クーラーも設置される予定であるという。クーラーのそばで遊ぶ子供たちの場に地震は起きないとか、何か突発的な事故が起きない、とだれが言えるだろうか。
 現在、日本のメーカー各社は自然冷媒を使用した同程度の効率の機器をつくる技術を有しており、それを使えば、このような心配をしないで済ませることができる。わたしたちは、ただちに危険なガスを用いる機器の生産を中止し、自然冷媒技術を使ってより安全で真に地球環境にやさしい機器を製造販売することを求める。

八木 雄二(ストップフロン全国連絡会理事長)

*参考:東日本大震災に伴うフロン等の大量排出(国立環境研究所発表)

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